年忘れベスト本 - 2010

2010年も気がつけば随分と昔のような気もしますが、ぼんやりしてベスト本を選んでいたファイルをブログに上げる暇が……。また少し時間ができたのでぼちぼち。特にジャンルは縛りなく、読んでよかった本の中から少し絞ってピックアップ。

宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)

宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)

宇宙飛行士に憧れて、ソビエト連邦という今や忘れられつつある国で月に行こうとした少年の半生の物語。主人公は果たして作中で真実を見たのか? などと邪推したくなる結末は、ロシア文学のダウナーな読後感。居心地の悪さがたまらなかった。

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

架空の連邦国家を構成する、国権に関わる支配階層や知的階層(やそのお供)の諸君12人が、ある北の地の全寮制高校で学び舎を共にし大人になるまでを描き出す。と、なんの話だって、第10回えんため大賞優秀賞受賞作(著:石川博品、イラスト:うき)『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』から『耳刈ネルリと奪われた七人の花婿』『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』と続く三部作は、青春ドタバタ群像劇から成長した彼ら12人の学園からの卒業後、再開として幕が下りる。困惑と笑いと最後は嬉し泣きなライトノベル

天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)

シリーズ物の国内SFで、これ程強く続刊が待ち遠しい作品があるだけで幸せになれたり。現代のパンデミックから、どこぞ知れぬ宇宙の何処かまで、壮大な叙事詩が進行形で紡がれてるなんて。羊肉を食べに、また南の島国に行きたくなりますが、作中でなら木星軌道でもラム肉にはありつけそう。ジュルリ、

WORLD WAR Z

WORLD WAR Z

「ゾンビごっこがTVCMで見られるとは」と、嬉しく思うようになりました。世界の終りの戦いは、ゾンビとの世界大戦とかいう小説。世界規模で共通の敵が存在したとして、その終戦後の人間社会に英雄はあれど、統一されるとかナイナイって。ドキュメンタリー形式でその者たちの物語が積み重なる重みも、対ゾンビでも人間ドラマだよ、と。

  • 『絶望同盟』

絶望同盟 (一迅社文庫)

絶望同盟 (一迅社文庫)

ライトノベルでも学園モノに食指が動くのですが、目が笑わずにニヤニヤできる系はいいですよねえ。表紙も中も、肌色の露出量が気になる方は、ぜひ。

ヴィークルエンド (電撃文庫)

ヴィークルエンド (電撃文庫)

紫色のクオリア』とは矛先を変えた新たな傑作。"サイバーパンク"が誰ぞの中でなにかはともかく、これもまた閉じずに進む子供たち、読者が本を閉じた先でもその先に行ってしまうだろうなという感じがひしひし。人間の限界に心身からの両面から、ヴィークルレースという己の肉体のみで超人的に突っ走っていくアプローチに脱帽。そこに限界はあるか!?

  • 『知はいかにして「再発明」されたか』

知はいかにして「再発明」されたか

知はいかにして「再発明」されたか

図書館にブラっと行って新着図書で置いてあってパラパラ。虜になりました。古代地中海文明圏から、西欧の知識にあえて的を絞り、なぜ現代でも古代の先人の知識が継承されてきたかを丹念かつ丁寧に読み解く。研究書にありがちな、「読みづらさ」を払拭させられるのは、この本もまた「知識の再発見」の様子をこうしたインターネットまで再発見し続ける物語にも読めるからだろうか。古代史であり、最先端の情報学。粘土や紙やデジタル信号など媒体を変えても、遺していくのが人の歴史なのかな。

知的エキサイティングの最前線にうってつけ。ブログ再録の部分など、たしかにそれは技術的に次へ行っている。だがしかし、現在進行形でググられる世界に大きな技術的ブレイクスルーがあったと気がつけるか。そして、気づいたとしてそれをどう感じるのだろうか。



ササッと羅列するつもりが、簡単な感想付きになってしまいました。ベストとしてはまとまりがありませんが、どれも2010年に出会えてよかった本の中でも忘れられぬ本ですね。また、まとまった感想を書いてみたいなあとぼんやり*1