耳刈ネルリと奪われた七人の花婿

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)

第10回えんため大賞小説部門優秀賞作『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』が読者半分置いてけぼりな妄想力溢れた素晴らしき全体主義国家学園ものだったので、続刊があることに驚いた。そりゃまあ優秀賞作品ですもの三作ぐらいはと思っていたら、本当に三作で終わってしまったらしい。おい、ちょっと待った! 散々ぱら失礼なこと言っておいてなんだけれども、勿体無いよなあ……というのは三作目を読むからにしたいところだけれど、『耳刈ネルリと奪われた七人の花婿』を読まされたあとではやっぱちょっと先走っちゃったわけですよ、はい。どこかで誰かがブレーキかけたんだろうけど、主人公の妄想力は五割減。それでもレイチくんはまぎれもなくHENTAIだよね! と言い切れるあたりが素晴らしい。お話としては学園で開かれる演劇祭に、仲好し小好しな一年十一組が飛び入り参加。それも演目はネルリのご先祖様な大ネルりの物語。よって、小ネルリが大ネルリ役でネルネルネルリ。そもそもこの学園が共和制から連邦制に移行した象徴的な、各地の連邦国家の王族と本土の子弟が共に学んでる学園。そんなところでかつての逆賊「大ネルリ」をネルリがネルネルネルリな上に政治思想があれなお方が首を出せば、中央の委員会も黙っちゃいませんぜ旦那なわけですよ。まあしかし、小説で演劇をやるってのは難しいねえ、などと思ったら更に上行くミュージカルで押し切られてしまいましたよ。いつの世もどんな世界も歌の力は偉大だってのは変わらないね。小説を読んでたはずが、いつの間にか演劇を見せられちゃったなんてのはなかなか体験できないよ。「自由・調和・博愛」そんなものも「ナラー!」