天地明察

天地明察

天地明察

江戸、四代将軍家綱の御代。ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること−−日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!!

冲方丁の魅力や特徴を敢えて一言で現せば「ジャンク」だと思っていた浅はかな考えを、見事にぶった斬ってくれたのが本書『天地明察』。しかも、ぶった斬るのに用いられたのが刀でも手裏剣でもなく、算盤と天測機だったのだから完敗。同時に乾杯。そしてその算盤や天測機にこめられた人間の想いは、これまでの作品と同じく強くしなやか。冲方丁という作家が「キャラクター」ではなく『人間』を描いてきたことを如実に表してるのではないかと思う次第。まさに現時点での冲方丁の最前線であり最高傑作と思わされてしまうんだけど、この作家はまだまだ止まらないんだもの。これから待ち受ける著者最後の「ライトノベル」『テスタメント・シュピーゲル』に、<マルドゥック>シリーズ第三部。いやもう今年は冲方祭りだぜ! てなわけで『天地明察』噂に違わぬ傑作でした!!