恋文の技術

森見登美彦の描く男たちは、皆揃って阿呆である。しかし、阿呆であるが馬鹿ではない。そこがなんとも憎らしい。最近では明言されないが、彼らは天下の京大生。例え能登半島島流しにされていようとも、関東地方の陸の孤島で親の脛をかじり続ける低学歴ニートとは違うんだい! と、嫉妬の炎で狼煙を上げてもいいのだけれど、なぜだか全然憎めない。三流大と言われようが、そのまた落ちこぼれと言われようが一度は腐れ大学生を演じてしまった身。彼らとのわずかな類似点を求めて、そして彼らの姿に自己を投影していたのです。ああ、永遠の大学生活。そういう意味でも『四畳半神話大系』は傑作。読むべし。ところが『恋文の技術』において、主人公は遂に外の世界に出ていく覚悟を持ったのだと勝手に思う。やむおえなかったのだ。だってこの作品において既に過去の主人公であった森見登美彦は作家としてよにはばたいてしまっているのだから。恋も仕事も『やむを得ぬ!』のだ。とりあえずは、僕もこれから毎朝ニッコリ笑って「やむを得ぬ!」と言おう。誰だって卒業しなければならないときはくるのだ。
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追記:ご結婚おめでとうございます