ブラッドジャケット

古橋秀之戦慄のデビュー作『ブロックロッド』に続く<ケイオス・ヘキサシリーズ>第二弾。デビュー作の勢いが衰えるわけもなく、より加速した物語とキャラクターは既に戦慄を通り越して笑いさえこみ上げてくるほど。不死身の吸血鬼なんて陳腐なもので、弾丸をも気孔でではね除けるアル中破壊僧。果ては十字架にテディーベアを張り付けた元殺人鬼の奇跡を体現する神父様に<神>降臨なんて常人の想像力を超越していますよ。や、そんなことは『ブラックロッド』で分かっていたことですが。
ところでしかし、表紙の少年少女が誰なのかと悩みつつ読み進めていたのですが、終盤どのキャラクターなのか理解できたときの切なさ。彼の持っている大口径マグナム、フック状の左腕、そして血のように赤いジャケット。彼女の切り下ろされた右腕と赤い瞳……。そうなんだよな、この物語は血と暴力と混沌に満ち溢れているのだけれど、根底に流れるのは彼と彼女の悲しい物語なんだよな……て、wikipediaに言われてる!?
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