ブラックロッド

もはや伝説と言っても差し支えない第二回電撃ゲーム小説大賞受賞作品にして、古橋秀之のデビュー作。現在の電撃文庫の路線の源流を作った作品とも言われ、この後の電撃ゲーム小説大賞の受賞者の中に「ブラックロッドに触発された」と言う作家も少なくない。また、ジャンルとしてはSF・サイバーパンクの系列にあり、古橋秀之のSF作家としての側面を既に垣間見せている。

ブラックロッド―公安局・魔導特捜官。精神拘束により全ての感情を封印した彼に表情はない。まるで死人の顔。ヴァージニア9―降魔局・妖術技官。黄色い外套をはおった少女。だが、侮る事は禁物だ。彼女は魔女の分身なのだから。ビリー・ロン―探偵業をなりわいとする気さくな青年。人なつっこい笑顔には、だが “牙”がある。ゼン・ランドー―3つの都市を奈落堕ちさせた隻眼の男。その正体は人か魔か…。

秋山瑞人冲方丁が好きならば古橋秀之を読めばいい。重厚なSF系ライトノベルが読みたければ本作を読めばいい。「最近ライトノベルが読めなくて」という後輩がいたら「ライトノベル=SFの植民地」史観と言われようが、ぼくは迷わずこの本を貸す。いや、貸した。彼はそのまま早川のリアル・フィクションに流れていったが、別に謀ったわけではないですよ? ともかく、『ブラックロッド』はとんでもない作品だ。果たして、この物語の魅力を伝える力があるのか? こうして読了後数日寝かしても言語化できないもどかしさ。物語に圧倒されて屈服させられて跪いているような快感。作者の創造力に己の想像がはついていけるかを試されているかのような読書体験。ライトノベルオールタイムベスト級のオススメ!
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