獣の奏者 I 闘蛇編

日本ファンタジー界の巨匠上橋菜穂子の送る極上のファンタジー巨編の序章。「精霊の守り人」に続いてNHKでアニメ版も放映中とのこと。というのも、残念ながら上橋菜穂子作品に魅せられたのが最近のためこの作品はノーチェックでした。それに、<守り人シリーズ>を追うだけで上橋菜穂子のファンタジーは十分満足などと思ってもいたり。しかしながら、とある読書会のお題に選ばれたのをきっかけに読み始めたところ、その見識の馬鹿らしさに自らあきれ果てることしきり。いやもう、ページをめくる手が止まらないとはこのことですね。

けっして人に馴れず、また馴らしてもいけない獣とともに生きる、宿命の少女・エリン。
母が指笛を吹き鳴らしたとたん、奇跡が起こった。だが、その奇跡を、母は「大罪」と呼んだ……。
獣ノ医術師の母と暮らす少女、エリン。ある日、戦闘用の獣である闘蛇が何頭も一度に死に、その責任を問われた母は処刑されてしまう。孤児となったエリンは蜂飼いのジョウンに助けられて暮らすうちに、山中で天を翔ける王獣と出合う。その姿に魅了され、王獣の医術師になろうと決心するエリンだったが、そのことが、やがて、王国の運命を左右する立場にエリンを立たせることに……。

あらすじはこんなところだけれど、この上巻はまだまだ壮大な物語の序章。まずは揺るぎない独特の世界観が示され、そこに住むエリンをはじめとした人々の営みを感じさせらるます。だからこそ、大きな運命を背負わされたエリンがどこか浮世離れした才能の持ち主だとしても、難なく感情移入させられるんでしょうね。早熟の天才エリンがこの世界の大きな陰謀の中でどう翻弄され、乗り越えられるのか下巻を読むのが楽しみですよ! ああもう、図書館で借りるんじゃなかった。これは買い直そう。青い鳥文庫版も出ているようなのでちょっと比べてみよう。