獣の奏者 II 王獣編

獣の奏者 II 王獣編
獣の奏者 II 王獣編
posted with amazlet at 09.02.19
上橋菜穂子
講談社
売り上げランキング: 2373

というわけで上下巻一気に読了しました。ぼくの稚拙な文章でこの作品を語れるとはみじんも思いません。主人公の成長、政治、歴史等が絡み合った物語は圧巻の一言です。主人公のエリンはとても賢い子です。天賦の才を持っているとも言えます。だからといって、その才能だけに頼らず、たゆまぬ努力と研鑽を積んでいきます。また、彼女を囲む人間たちも血の通った良き人々です。しかし、描かれる世界は非常に過酷で残酷です。エリンの周りには力強く勇気のある人々はいても、どんな困難もたちどころに解決してくれる存在はいません。下巻において、エリンは、ほのぼのとした日常から徐々に引き離され、大きな政争の具となっていきます。その課程で、時には孤独に、時には仲間と共に、苦悩し挫折しながらも「現実」に立ち向かうのです。まあ、ちょっといい子過ぎるとは思ったけどね。途中までは。最終的に彼女が選んだ道とその結果には恐れ入りました。いやはや、上橋先生強いなあ。ただちょっと残念なのは、この物語の世界がおそらくまだまだ描き切れていないこと。上橋先生の中ではもっと緻密な世界が展開されてるんでしょうが、上下巻では致し方ないか。それにしても、「決して人に馴れぬ孤高の獣に向かって、竪琴を奏でる娘」というイメージからここまでの物語を紡いでしまうことには改めて脱帽です。アニメをご視聴の方々にもお薦めの作品です!