ネムルバカ

ネムルバカ (リュウコミックス)

ネムルバカ (リュウコミックス)

石黒正数コミックリュウで連載していた作品の単行本化。コミックリュウの創刊号で読んだ時には、変わった読みきりだなと思ったものの、連載が続くに連れこれはただもんじゃないぞ!と思いつつ、コミックリュウ自体は購読を止めてしまった。だからこそ、この浮遊感のある物語の結末にはある種呆然とし、しばし自分の過去と現在にまでのしかかってきた。
物語は大学の学生寮で同室の、先輩と後輩のふたりの女子が主人公。モラトリアムという名の浮遊感の中で生活するふたり。先輩は身にもならない音楽に打ち込み、後輩は将来の展望も無く恋愛に空回りしたりと、ただただ大学生という特権の中で過ごす日々。そこにいつもの石黒正数テイストの笑いが絶妙に絡むのだけれど、本作ではそれすらもふたりの終わりが無く見える日常の苦さを浮き彫りにする。そんなふわふわゆるいけれども、切実な日常はラストで一気に収束し、また拡散する。この終わり方には本当に胸をえぐられた。
それにしても大学生活というのは、なんて心地よく残酷なのだろうか。作中で彼女/彼らが語る言葉に過去の自分が透けて見え、現在の自分がえぐられる……という割には、僕は大学生をできなかったんだけどね。お薦め。