赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

桜庭一樹直木賞受賞の報を聞き、これはライトノベル界隈も騒がしくなるぞと思い、記念に本書を読む。前回の候補作だというところは気にしてはいけない。最初は二段組のボリュームに恐る恐る読み進めていたものの、どんどん文字を追うことしかできなくなる。世に言う徹夜本でした。おかげで感想書く前に昼寝してしまったことはともかく、桜庭一樹の才能に旋律したことは確か。

「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。

ここまで書ききられてしまうと、下手な感想も書けないほどの傑作。僕は下手な感想しか書けないので「この本は誰にでも薦められる傑作ですよ!」としか書かない。そして、この水準で受賞できなかった直木賞は、『私の男』には受賞させたんですよね。『私の男』はどれだけの本なのかと、想像するだけで身震いがしますよ。選考委員や文藝春秋の方を信じていいのかな?(笑)