蓬莱学園 弁天女子寮攻防戦
- 「冒険者求む!」波多野とおる
良くも悪くも蓬莱学園という舞台を活用した短編ライトノベル。登場人物も、頼りない男主人公に勝気なヒロイン、没個性的になってしまった個性的な脇キャラたち。話自体も、ちょっとした冒険アクションで読み終わって何か残ると言えば何も残らない。箸にも棒にも引っかからない導入編。
- 「弁天女子寮攻防戦」賀東招二
趣味だねえ(笑)な作品。恥ずかしながら賀東招二は未読でしたので、デビュー作から読んだことになるわけですね。盗撮野郎がひとりで女子寮でテロリスト相手に頭脳戦。著者自ら言及している通り蓬莱学園版「ダイハード」。まあ、文章はデビュー作とは思えないほど読みやすいし、話もオチまで綺麗にできてるんだけれど、なんというか…なあ(笑)。まだ純粋に笑いにも燃えにも昇華できていないのが残念。
- 「硝子瓶の中から」玖条正文
錬金術部の男子学生と作られたホムンクルスの物語。字の文は癖が若干強めだが、退廃的ホラーの雰囲気を出そうとしている努力が滲み出ている程度。いいんでないの。ただ、ほとんどのパートを占めるホムンクルスによる叙述が見事で、素直に一杯食わされた。更に、落としどころも綺麗にできた良い短編でした。
- 「卒業の条件」一二三四郎
20歳になってもうだつが上がらず、蓬莱学園すら卒業できない主人公が仕送り停止の危機に追い詰められて、遂に意を決するお話。試験の答案用紙を盗み見るというだけ話なのに、職員室棟の教員は銃火器で武装し、あまつさえ戦闘ロボットで迎え撃ってくるという始末。
そんな絶体絶命の状況下で出会う二級生徒の女スパイ。いやはや、二級生徒という題材も巧く使ってすとんと落とした、これも巧い短編でした。
- 「南の島に、魔女の群れ」新城十馬
トリは新城十馬。さすがに群を抜いた作品に仕上がってます。蓬莱学園らしい馬鹿馬鹿しい怪事件を、謎の美人新任女教師とお気に入りの生徒のテンポのいい掛け合いでぽんと解決。真相も、それに至る過程も馬鹿馬鹿しいけどそれでこそ蓬莱学園。うん、なんだかんだで一番面白かったな。あと、しのぶ先生のイラストが無駄にエロス。
- あとがきとか
新城十馬の総括に「市場に出された作品には、あらゆる批評を真正面から受け止める義務が生じる」とあって、新城カズマとなった現在までブレのない人だなと。誠実に取り組んでるのだなと、読者も感じると思いますよ。ほんと。
それと、余談ながら表紙イラストの脈絡のなさに笑った。勢いだよな!