神様のメモ帳

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

It's the only NEET thing to do.
これがたったひとつの冴えたやり方

アキハバラ@DEEP』を読むのなら本書『神様のメモ帳』を読むことをお薦めする。同じ題材を扱いながらも石田衣良より杉井光のほうが断然優れた作品に仕上げていることを保障する。僕の保障なんてほんとに屑同然だけど、まあ同じニートが言ってるんだからと思ってほしい。
主人公はニート予備軍決定な無気力非コミュな高校生ナルミ。そんな彼に何故か親しくしてくれる彩香。そして彼女を通して知り合う、ラーメンよりもアイスが美味しいラーメン屋に集まるニート達の物語。元ボクサーで現パチプロのテツ先輩、軍オタの通称少佐、ヒモのヒロさん、ヤクザまがいに街を仕切る四代目。そしてドクターペッパーをこよなく愛すひきこもりニート探偵のアリス。彩香と出会い、彼らと出合い、不思議に居心地よい日常を歩み始めたナルミだが、街にはびこり始めた違法ドラッグがそんな彼の束の間の幸せを奪う。
四代目の仕切るヤクザ紛いの若者組織など、石田衣良の人気シリーズ「池袋ウエストパーク(IWGP)」と被るところも多い。しかし、同じくどこかに生き辛さを抱えている若い読者でもライトノベルを読むような人には断然こちらをお薦めする。これは別に、萌え要素があるとか無いとかではなく、僕らの行き辛さは杉井光の描く行き辛さのほうに近いと思うからだ。それを中二病と言う人もいるかもしれない。しかし、本気で僕らはこうして悩んで生きているんだ。
おっと、作品紹介からまた外れた。探偵がいるのだから、作中事件は起き、彼らは解決に向かう。各々思いは違えども。文章はこなれており、ミステリとしても飽きさせないことも最後に保障しておく。
因みに、冒頭の引用はアリスの部屋の扉にかかっている「ニート探偵事務所」という札に一緒に書かれている言葉。巧いな。