エンド・クレジットに最適な夏

A HAPPY LUCKY MAN―長編小説』『玉響荘のユーウツ』に続く福田栄一のクライムミステリー。今作も、期せずして多くのトラブル解決を抱え込むことになってしまった大学生の主人公が東西奔走三転四転絶体絶命。ただ今回の主人公晴也は、まるで『』のマコトのごときキャラクター。荒事にもなれ肝も据わった解体現場でバイトするガテン系大学生。そんな奴いるか(笑)! 『A HAPPY LUCKY MAN』の、ちょっと気弱だけれど、心底お節介で頼まれごとは断れないな主人公とも、『玉響荘のユーウツ』の情けない主人公とも違います。強いぜ、こいつ。だから、絶体絶命ってこたないな。ただし、小学生の妹にはデレデレなところがチャームポイント?
ぽんぽん話が展開し、複数の事件の糸が絡み合う展開はいつもどおり見事のひと言。ただ、絡み合った事件と人間関係の糸がラストにほぐれた時に残るものが、前ニ作との違い。著者の成長とも「ミステリ・フロンティア」の性格とでも言えるかな。さてさて、福田栄一の「普通の」青春小説も読んでみようか?